青色申告は、個人事業主が正確な帳簿を作成し、適切な申告を行うことで、税務上の特典を受けることができる制度です。また、正確な帳簿を作成することにより経営の透明性を高めることができます。以下では、青色申告によるメリットや要件等について詳しく解説します。
1.青色申告するための準備
青色申告をすることができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です。
青色申告承認申請書の提出
青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出します。新規開業の場合は、事業開始等の日から2ヶ月以内です。その年の12月31日(新規開業の場合は、翌年2月15日)までに、承認しない旨の通知がこなければ承認されたものとされ、取り消し等の決定がなされない限り、翌年以降も青色申告となります(毎年「青色申告承認申請書」を提出する必要はありません)。
帳簿書類の作成と保存
年末に貸借対照表と損益計算書が作成できるように複式簿記により記帳することが求められます(仕訳帳、総勘定元帳、試算表などの作成)。
また、税務上の特典は少なくなるものの、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような簡易な帳簿を備え付け、簡易な記帳によることも認められています。
また、記帳するにあたり証拠書類とする請求書、領収書など(証憑(しょうひょう)といいます)は、原則として確定申告期限の翌日から7年間保存します。
会計ソフトを使用する場合は、通常は複式簿記で記帳されるので、複式簿記による記帳か簡易な記帳かは意識する必要はありません。
2.青色申告のメリット
青色申告制度を利用することで、以下のようなメリットがあります。
青色申告特別控除
不動産所得と事業所得から合わせて55万円を控除することができます。所得が減るので税金が減ることになります。ただし、あくまで控除ですので、対象となる所得がなければ控除できません(例えば、事業所得30万円のみの場合は、55万円ではなく30万円の控除となる)。
また、電子帳簿保存またはe-Taxで電子申告を行うことにより、追加で10万円控除でき、最大65万円が控除できます。
最大65万円控除するためには、複式簿記により記帳した帳簿に基づき作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、法定申告期限内(通常は3月15日)に提出する必要があります。
なお、簡易帳簿による簡易な記帳の場合や、確定申告書に貸借対照表を添付できない場合は10万円の控除となります。山林所得のみの方も10万円の控除となります。
青色専従者給与
青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、15歳以上で、その事業に専ら従事している人に支払った給与を、事前に届け出た金額の範囲で必要経費にできます。
「生計を一にしている」とは、日常の生活の資を共にすることとされており、簡単に言えば、同居に限らず、いっしょの財布で生活していることと考えられます。
個人事業主は、自分に給料を払うという概念がありません(事業の儲けで生活する)。生計を一にする配偶者等に給与を払っても、自分の財布に還流することになり、これを際限なく必要経費として認めると不当に所得を減少させることになります。
そのため、青色申告制度のもと適切に記帳を行い、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届け出た金額の範囲で給与の支払いを行っている個人事業主に限り、特典が認められています。
貸倒引当金
事業所得がある青色申告者は、事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金について、年末残高の5.5%以下の金額を貸倒引当金として繰入することができ、繰入額を必要経費として算入できます(金融業の場合は3.3%)。
ただし、前年末の貸倒引当金は戻入れして所得に算入しますので、実質的には前年末と当年末の貸倒引当金の差額分だけ所得を下げることができます。
純損失の繰越しと繰戻し
(純損失の繰越し)
毎年の所得が黒字であろうが赤字であろうが翌年以降の税額に影響はありませんが、青色申告を行うことで、赤字が出た場合にその赤字を翌年以降3年間にわたって繰越しでき、黒字が出た場合に黒字から控除することができます。
(繰戻し)
また、前年も青色申告している場合は、上記の純損失の繰越しに代えて、前年分の所得税から、赤字額に対応する部分について還付を受けることもできます。当年の赤字よりも前年の黒字の方が大きい場合や、翌年3年間も黒字化が見込めない場合などは、繰戻しによる還付を受けた方が有利になることが多いです。
3.まとめ
青色申告のメリットを最大限活用するためには、複式簿記での記帳や法定期限内での確定申告書の提出、必要な届出書の作成と税務署への提出など、一定の手続きを行う必要があります。また、上記に記載した以外にもメリットを受けるために詳細な要件があります。要件に該当するか判断に悩んだりすることもありますので、会計事務所のサポートを受けることもご検討ください。